変形性ひざ関節症とは、ひざ関節の軟骨の質が低下し、少しずつすり減って、ひざに痛みが生じる病気です。
現在、ひざの痛みを抱えている人は、日本全国に40歳以上で800万人いると考えられていますが、その大部分は変形性ひざ関節症です。
PRPとは、多血小板血漿(Platelet Rich Plasma)の略語で、血小板を多く含んだ血液を意味します。ケガをしたときに血が止まり、自然と傷がふさがって治るのは、実は血小板の働き。血小板には、傷んだ組織を修復する「成長因子」が多く含まれているのです。
PRP関節注射は、そんな血小板の働きを利用して、体が本来持つ修復力をサポートする治療です。患者様ご自身の血液から多血小板血漿だけを取り出し、ひざに注射するだけという手軽さなのに、痛みを抑えるだけでなく、変形性ひざ関節症の進行を遅らせることができます。また、ご自身の血液を使うため、拒絶反応やアレルギー反応などのリスクが少ないことも安心です。
当院の岡本慎一理事長は2010年より、PRPの研究を重ねてきました。その研究において、通常は血液の2〜3倍程度の濃縮が限界と言われているPRPを最大10倍まで濃縮することに成功。
その研究結果を発表した2011年、整形外科基礎学会『Orthopaedic Research Society』(アメリカ、ニューオリンズで開催)では、ニューインベスティゲーターアワードのファイナリストに選出された他、2012年には組織再生工学の国際的ジャーナル「Tissue Engineering」でPRP治療に関する論文が紹介されました。さらに2012年にはアメリカにおいて、PRP治療の特許を取得しました。
再生医療等安全性確保法(自由診療・臨床研究の枠組みで再生医療を行うための法律)のもと、特定認定委員会の厳しい審査を通過し、治療提供計画が厚生労働省に受理された医療機関だけが、再生医療を提供することができます。
医療法人社団康静会グループの自己多血小板血漿の膝関節内注射に関する第二種再生医療等提供計画も、厚生労働省に受理されており、計画番号(PB3200005)を取得しています。
これまでは、変形性ひざ関節症を治すのに、「体操をする」「痛み止めを飲む」「湿布を貼る」「ヒアルロン酸注射をする」などで効果がなければ、骨切りや人工関節を入れるような手術を受けるしかありませんでした。そこに第3の選択肢として新たに加わったのが「PRP関節注射」です。
受けるのが早ければ早いほど進行を遅らせることができ、「もう手術しか治療法がない」といった患者様の症状も、注射だけで改善が期待できます。
PRP関節注射 | ヒアルロン酸注射 | |||
適応期 | ||||
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適応期 | 進行度に関わらず高い効果が見込める | 初期~中期に効果が見込める | ||
作用 | ||||
作用 | 炎症を抑え、痛みを改善する 組織を修復し、変形の進行を予防する |
関節の動きを滑らかにする | ||
治療回数 | ||||
治療回数 | 1〜3回(効果を見ながら、必要があれば2・3回目を検討する) | 3〜5回(2週間おきが一般的) | ||
即効性 | ||||
即効性 | 2週間程度で痛みが改善することが多い | 効果がある場合は直後から痛みが和らぐ | ||
副作用 | ||||
副作用 | 特になし | 頻回な注射による感染リスク | ||
メリット | ||||
メリット | 自分の血液なので安全性が高い 効果の持続期間が長い(半年以上) |
保険適応 | ||
デメリット | ||||
デメリット | 保険診療より費用が高い | 保険適応となる回数に制限がある |
診察料 | 2,000円 | |
レントゲン読影料(持参された場合のみ) | 1,000円 | |
PRP関節注射 | 片膝 (1回) |
38,000円 |
片膝 (3回) |
98,000円 | |
両膝 (1回) |
68,000円 | |
両膝 (3回) |
173,000円 | |
ヒアルロン酸注射 | 片膝 | 2,800円 |
関節穿刺 | 片膝 | 2,500円 |
※3回コースでは初回に3回分の採血を行います。
※保存期間は半年となります。
※両膝3回コースの場合は事前に簡易血液検査を行います(無料)。
<画像診断について>
PRP関節注射は、変形性膝関節症の方のみを対象としており、診断にはレントゲン画像が最も有効となります。
そのため、他院で撮影された画像はレントゲンのみお持ち頂くよう、お願い致します。
変形性ひざ関節症の治療法として、これまではヒアルロン酸注射で効果がなかった場合、手術という選択肢しかありませんでした。しかし多くの方にとって、手術は大きな決心のいる人生の一大事。侵襲、入院、リハビリなどの不安から、決断できなかった方も多いはずです。
そんな中、選択肢として新たに加わった「PRP関節注射」は、保険適用外となるので、費用のご負担は否めません。しかしご自身の血液を使って、注射だけで手軽に治せるのは大きなメリットです。ひざの痛みから解放されれば、いろいろな場所に出かける機会が増え、大好きなスポーツも再開することができて、人生の質が向上するのではないでしょうか。
私たちは患者様の気持ちに寄り添い、「人生の幸せ」に少しでも貢献できたらと願っています。少しでもご検討中の方がいらっしゃいましたら、受ける受けないに関わらず、お気軽にご相談ください。