下肢静脈瘤といえば足のコブがもっとも有名な症状です。
コブになるのはおおよそ10人に1人と言われていますが、実はコブにはならなくても静脈瘤になっている人がいることをご存知でしょうか。

そういった人は、足のいろんな不快感で悩んでいます。
しかし、コブが無いために自分では静脈瘤だとは気が付かないことが多いのです。
潜在的に下肢静脈瘤の症状で悩まされている患者さんは、30歳を超えると2人に1人と言われています。
また、出産経験のある女性の2人に1人が下肢静脈瘤を発症すると言われています。
これをお読みのみなさまは、思った以上に多い数字だと驚かれたかもしれません。

ではなぜ、コブはないのに静脈瘤にかかっているのでしょうか?
それは、実は「血管がボコボコ浮き出てきた」という症状が、静脈瘤がかなり進行してから現われる末期症状だからです。

末期症状になる前の初期症状の段階ではボコボコしたコブはなく、むくみやだるさといった不快さを感じています。
その状態から、何十年もかけてゆっくりと進行してようやく見た目でもわかるコブになるのです。

ふくらはぎをさわる女性

これをお読みのみなさまで「足のむくみや重さ、だるさがあるからマッサージに通っている」という方はいませんか?
それらの不快さを感じている場合、もしかしたら下肢静脈瘤かもしれません。
見た目だけで判断しづらいですが、できることならコブになる前の初期症状で見つけ治療し、早く不快さから解放され、見た目もきれいな足になりたいですよね。

ここからは、下肢静脈瘤の初期症状に焦点を当てて解説します。
当てはまるものはあるか、ぜひご自分の足と見比べて読み進めていってください。

実は下肢静脈瘤の初期症状かも

下肢静脈瘤の初期症状
下肢静脈瘤というと、血管がボコボコ浮き出るイメージがあり美容面で問題があると考える方が多いのですが、見た目の問題だけでなく自覚症状として日常生活に支障をきたしてくることがあります。

血管が浮き出してくる前の初期にもある自覚症状は、「むくみ」や「足の重だるさ」、「足がつる(こむら返り)」、「足のほてり」、「足のかゆみ」があります。

これらの症状だけでも、自分の足に起こっている状態をイメージすると不快感があり解消したくなりますよね。

「足のむくみ」、「足の痛み・重だるさ」、「足がつる(こむら返り)」といった症状は、疲れると誰でも起こると思いがちなので、なかなかこれが病気からくるものだとは思いません。

こういった症状に下肢静脈瘤が関連していることは意外と知られておらず、症状に悩まされていてもマッサージや整体などで様子を見ている方のほうが多いのではないでしょうか。
やはり、それだけで病院を受診しようとも思わないでしょう。

「かゆみ」も、ひどくなると湿疹が出たりすることもあり皮膚科で軟膏やクリームをもらってケアしているだけになっている人もいます。

ところが、実はこれらの症状は下肢静脈瘤の初期症状かもしれないのです。

下肢静脈瘤とはそもそもどんな病気?

静脈がコブのようにふくらむ
下肢静脈瘤の「瘤」というのは「コブ」という意味ですが、これは下肢(脚)の静脈がコブのようにふくらむことが名前の由来です。

そう聞くと、このコブがいわゆる「がん」のように悪さの根源だと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

下肢静脈瘤の原因は“血液を心臓にもどす”役割の静脈の働きが悪くなるのが原因です。
その結果、足の静脈に過剰な血液がたまってコブのように膨らんでしまうのです。

静脈の働きが悪くなる原因は、体質や遺伝、立ち仕事などの環境の要因などさまざまですが、下肢静脈瘤の初期症状は、静脈の働きが悪くなり始めたときに現れます。

静脈の働きについて

静脈の働きについて簡単にお話しておきましょう。
静脈は、動脈とは違い栄養分が少なく老廃物を含んだ血液、いわゆる「汚れた血液」を心臓に戻す血管です。
重力に逆らって足から心臓に血液を戻すとき、もし静脈が何の機能も持たないただの管だったら、血液は重力に従って上から下へ流れ落ちてしまいます。
そうならないように、静脈の中には「静脈弁」(また名を「逆流防止弁」)があり、心臓に戻った血液の逆流を防止しています。
静脈弁は「ハ」の字をしており、下から上には流れますが、上から下には流れない一方通行の構造になっています。

正常な静脈と下肢静脈瘤の違い

注意!見た目ではわからない時期がある

見た目ではわからない

上記で説明した通り、血液の逆流が起こると、その逆流した血液は足に溜まります。
また逆流している静脈自体はふくらんで太くなります。

年齢的に若い人や発症して間もない頃は、まだ逆流した血液の量が多くないので、静脈もそこまで太くありません。
また、若いうちは肌にも弾力がありますので、足のなかで静脈がふくらんでも抑えつけてしまうのです。
この表面からはわからないけれど、逆流が起こっている時期は人によっては何十年も続く場合があります。

見た目にはわからなくても、足に汚れた血液が溜まることには違いありません。
本来心臓に返るべき血液が足にたまるので、当然むくみます。
また静脈を流れる血液というのは、栄養分が少なく疲労物質や炎症物質を含む血液ですので、足のだるさや重さなどの症状がでます。
また、血液の電解質バランスが崩れることにより夜間や明け方にこむら返り(足がつる)が起きやすくなります。

このように、発症しているけれど見た目ではわからない、いわゆる「潜伏期間」では、症状によって日常生活に支障をきたしたとしても、自分では下肢静脈瘤と気が付かないどころか、医療機関を受診しても診断されない場合もありますので注意が必要です。

下肢静脈瘤の初期症状か否か、どう判断?

見た目には表れていない初期症状として起こるのは「むくみ」、「だるさ」、「こむら返り」、「ほてり」、「かゆみ」とご説明しました。
※上記以外に足の「痛み」や「しびれ(ピリピリする不快感)」などを感じる場合は、他の病状の可能性があります。

ここからはより具体的なケースを挙げていきましょう。
ご自分に当てはまるものはないか、今日一日を思い返してみてください。

当てはまるものはありませんか?

  • 朝起きたときは足がすっきりしているのに、夕方になるとむくんでパンパンになる
  • 長時間立っているとふくらはぎが重く・だるくなる
  • マッサージで一時的にだるさが良くなってもすぐに元にもどる
  • 座っている時に足を上げたくなる or 足を組みたくなる
  • 夜寝ているときや起きて伸びをしたときに足がつる
  • 足が慢性的にかゆい

いかがでしょうか?

「しかし、この程度の症状なら誰にでもあるのでは?」と思うでしょう。

おっしゃる通りです。20代以降は、こういった症状で悩んでいる方は、とても多いです。
これらの症状がすべて下肢静脈瘤由来というわけではありませんが、上記のような症状がある方の中で初期の下肢静脈瘤が原因の方が少なからずいらっしゃいます。

では自分が下肢静脈瘤かどうか、どのように判断すればよいのでしょうか。
答えは「病院へ行き、エコー検査で静脈の逆流を評価する」しかありません。
病院やエコー検査と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、エコーは腹部エコーや心臓エコーなどに代表されるように、あらゆるところで使用されている安全性の高い検査です。
プローブという機器を肌に当てるだけで、体への負担は一切ありません。
また、保険証があれば検査費用も3000円程度ですので、そこまで高い検査でもありません。

下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、必ず悪化してしまいます。
また、症状も慢性的となり患者様を苦しめます。
そう考えると、自分がどういった状態なのか、検査だけでもしておいても良いかもしれませんね。

これまでの話のまとめ

これまでの話をまとめると

  • 下肢静脈瘤は、コブが現われた状態はすでに末期症状である。実はコブができるのは、そのなかでもおおよそ10人に1人。
  • コブにならずに潜在的に静脈瘤になっている場合があり、症状に悩んでいる人は、30歳以上に2人に1人はいると言われている。
  • 末期症状になる前の初期症状は足の「むくみ」や「だるさ」などがあり、下肢静脈瘤だと気づきにくい。
  • 肌のハリがある若い人は、足のなかで静脈がふくらんでもわかりにくい。
  • 自分が下肢静脈瘤か否かは、病院でエコー検査をしてみないとわからない。

となります。

放っておくと重症化してしまう可能性も

重症化
下肢静脈瘤は、ボコボコしたコブが現われていない場合でもなりうることと、放っておくと重症化してしまい、だるさや重さ足がつるなどの症状が悪化することをお分かりいただけましたでしょうか。
自分では気づきにくいため今回の章をお読みになり、気になった方はぜひ一度検査をしてみるのをおすすめします。

岡本慎一医師監修