足の症状(むくみやだるさ等)を感じ、病院で診察を受けようと思っても「下肢静脈瘤は何科へ行けばよいの?」という疑問は数多く寄せられます。
このコラムでは、ご自分が「下肢静脈瘤かな?」と思ったら何科に行けばよいかをご説明いたします。
下肢静脈瘤を扱う診療科について
下肢静脈瘤はその名の通り、静脈という血管の病気です。
以前は、外科的な手術による治療がスタンダードでしたので、原則的に専門は「血管外科」となります。
しかし、血管外科がある病院は少なく、あったとしても下肢静脈瘤の治療を行っている病院はそれからさらに限られるのが現実です。
また、血管外科は、心臓血管外科の一部門であり、直接命にかかわる心臓や動脈などの病気が優先されるため、血管外科医といっても下肢静脈瘤の治療の経験が豊富とは限らない場合があります。
2011年に下肢静脈瘤に対する血管内治療(以下、カテーテル治療)が保険適応となったのをきっかけに、上記のような下肢静脈瘤治療を血管外科だけが行うという状況は徐々に変わりつつあります。
カテーテル治療は高周波やレーザーを使った「切らない」治療法であり、基本的には血管の高度処理や、縫合が必要な切開は行いません。
その代わりカテーテル挿入のテクニックやエコー技術などを習得すれば科を問わず行うことが可能です。
カテーテル治療を保険適応で行うには、「実施医」という資格が必要ですが、それには何科という要件は入っていません。
また、「実施施設基準」(カテーテル治療を保険適応下に行うための施設基準)では、血管外科医だけでなく、脈管(みゃっかん)医、皮膚科医、形成外科医、放射線科医の専門医が常勤でいれば申請ができます。
実際に、形成外科や皮膚科で治療を行っている病院もあります。
このような状況から、「下肢静脈瘤は何科に行けば治してもらえるか?」という質問が成り立たなくなってきています。
増加している「下肢静脈瘤専門クリニック」の存在
答えは、下肢静脈瘤治療を専門としているクリニックに行くことです。
近年、下肢静脈瘤を専門に扱う医療機関が全国的に増えてきました。
都道府県に1つはあると言っても過言ではありません。
ですから、最近の病院は、ほとんどがホームページを持っていますので、「自分が住んでいる都道府県や市町村名」と「下肢静脈瘤」という2つのキーワードでインターネット検索されるとよいでしょう。
もし近隣になくても、長期の通院は必要ありませんので、多少遠方でも来院を検討してはいかがでしょうか。
下肢静脈瘤専門クリニック選びの3つのポイント
下肢静脈瘤専門クリニックのなかでもいくつか候補がある場合、どうやって選べばよいのでしょうか。
ここで、3つのポイントをご説明します。
実際に治療を受けた人に聞く
下肢静脈瘤は、発症する人が非常に多い病気ですから、親族や知人に手術を受けたことがある人がいる可能性は高いです。
そういった人に術後の調子は良好か、良好な場合はそのクリニックを教えてもらえば確実です。
かかりつけ医に聞く
かかりつけ医がなくても、風邪やほかの病気で病院にかかったときに医師に聞くのがよいでしょう。
下肢静脈瘤にかかっている人はとても多いですから、たいていの医師は今までにもたくさんの下肢静脈瘤の相談を受けているはずです。
その場合、実際に自分が紹介したクリニックで治療を受けた患者さんもみていますので、そこがよいクリニックかどうかよく知っていることが多いです。
医師の話を聞いて決める
下肢静脈瘤の進行は、非常にゆっくりです。
また、悪性の病気でもありませんので治療を急ぐ必要はありません。
実際にクリニックで診察や検査をして、最終的には医師の説明に納得してから治療に踏み切るかどうかを決めるのがよいでしょう。
インターネットの口コミも参考に
もし、近くに治療を受けた人がいない、かかりつけの医師がいないという方は、インターネット上での病院の口コミを参考にしたり、ホームページやクリニックのブログなどの文章を見れば、どういった方針で治療を行っているか、ある程度判断ができます。
岡本慎一医師監修